さわかみ投信株式会社 澤上篤人

投稿者:ファイナンシャルマガジン編集部  2007年08月10日 インタビュー | 経営者

 
 
今、日本では、ものすごい勢いで貯蓄から投資運用へと個人資産が流れてきています。投資運用経験のない方が、投資の世界へ参入することも多いようですが、どんなことに注意すべきでしょうか?

まず、「運用」とは、「結果」の世界です。ですから、「運用」を一言でいうと「お金を増やすこと」です。増やすことが前提なのです。 

個人が運用に注目する契機の1つとして、年金問題が挙げられますね。みなさん感じていることは、年金が当てにならなくなったら、生涯の生活資金を自分で用意、もしくは運用によって得なければならないということでしょう。 

若い方であれば50年の運用、定年後の方でも20年、30年近くの運用が必須となります。ですから、私は、中期ではなく、長期での運用必要になると考えています。 

では、その長期運用にとって、必要な考え方というのはどのようなものでしょうか? 

大切なことは、「長期投資は自分が死ぬまで運用する」ことです。ですから、「長期投資」の方向性というのは、「やたらめったら勉強しなくてもいい。難しく考える必要は無い。ただし、『やること』をやらなくてはいけないよ」ということです。 

難しく考える必要はない理由。それをこれからご説明いたします。 
一番最初に考えるのは、「我々、長期投資家は、相場、業績、投資の理論やテクニックを全て無視する」ということです。 

なぜ無視するのか。この理由は簡単で、相場は買う人が多ければ上がる。売る人が多ければ下がります。どんなに景気がよくても、売る人が多ければ相場は下がるんです。30年、40年の運用を考えたときに、変動の激しい短期の相場を追い続けると誰しもが、疲れきってしまうわけです。であれば、「最初から相場を無視してしまう」。 

あるいは、業績についても、四季報を買って、一生懸命勉強されている方も多いでしょうが、せいぜい分かるのは今期・来期、長くて2年後の業績予想ですね。繰り返しになりますが、われわれの財産作りは、10年、20年、50年間に及ぶものです。10年先の業績予想はどこにもない。どうすればいいのか?探しても無いのなら、いっそ忘れてしまうことです。 

投資の理論やテクニックもたくさんあります。もし、これぞ決定版という理論があれば、みなさんすぐにそれを実践するのが良いでしょう。ただ、そんなものが存在していたのなら、世界中の投資家がすでに大金持ちになっているはずです。残念ですが、大金持ちというのはそれほど生まれていない。決定版となる投資の理論・テクニックは存在しないのですね。もちろん1~2年間、有効な理論と言うのは存在し得ます。しかし、永久に妥当性を持つ理論と言うのは、「市場」にはありえません。 

「市場」と言うのは、ありとあらゆる価値観、利害関係、知恵がぶつかり合う場所です。ですから、色々な手法が尽きることなく出てくる。長期での投資を考えると、理論を追い続けることも得策ではないということになります。 

では、長期投資家は何を考え、行動しているのか。 
我々は景気の大きなうねりに対して、不景気のときに、ありったけのお金を持ってきて株を買う。そして、景気が良くなって来たら、現金化していく。また、景気が悪くなったら、その現金でドンと株を買う。こういった行動を繰り返します。それだけです。 

これだけでは、よく分からないかもしれませんが、この運用法は、経済や社会に非常に大きな役割を果たします。バブルのときを思い出してみてください。みな土地や株を買いに買って、ひっくり返った。高値掴みしてしまったから、売ろうとするが誰も買わない。それでも無理して売ろうとする。 

この連鎖で経済は、大変に縮小し、地価や株価は下がる一方でした。こうしてデフレ現象が進行し、「不況の長期化」が起こりました。不良債権問題、ゼロ金利政策、皆こうした流れの中で出てきたことですね。 

この結果、昨年、日銀総裁が発表したように、「ゼロ金利」政策によって家計が失った所得が11年間で304兆円になったんです。年間にしたら28兆円くらいの利子所得の損失です。皆が不幸になった要因は、ひとえに「売りたい人に対して、買いたい人がいなかったから」です。 

日本は、バルブの前も、後も、そして今も、世界最大の債権国であるのは間違いないですね。例えば、個人の金融資産1540兆円と言われていますが、その中で預貯金など眠った資金が、780兆円あるわけです。780兆円に対して、人口1億2700万人。アメリカは、3億人に対して預金500兆円くらいです。これらの資金が眠ったことによって、日本では、バブル崩壊後13年も低迷したわけです。 

対して、不況期に株を買うことは、民間版の景気対策になります。株を売った資金を手にした人たちが、食事をしたり、工場を建てたりと、経済の回転を促進することになるからです。 

    ( 「ファイナンシャルアカデミー 投資フェスティバル2007」でご講演頂いた内容をベースとしております。)

 

1973年ジュネーブ大学付属国際問題研究所・国際経済学修士課程。スイス・キャピタル・インターナショナル社アナリスト兼ファンドアドバイザー、スイス・ピクテ銀行・日本代表として活躍される。1986年にピクテ・ジャパン株式会社・代表取締役社長を経て、1996年さわかみ投資顧問株式会社設立。1999年さわかみ投信株式会社に社名変更、日本で初めて独立系ファンドの運用を始める。

 

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